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ゲイは遺伝する?

更新日:2021年05月25日

ゲイが生まれる理由? ゲイは遺伝する?

はじめに

近年、ゲイ(LGBT)について政治的な話はよくされるようになりました。
その一方でLGBTの**「生物学的」な意味合いについてはあまり語られません。実の所子孫を残すことを目的とした「生物」としては、なぜ同性愛が存在するのかは非常に謎です。
ここでは同性愛のなかでも
ゲイつまり「男性が男性とセックスをする」**ことについて考えていきます。

ゲイは進化論的には矛盾している

ダーウィンの有名な進化論から考えるとゲイは「矛盾した存在」と考えられています。
進化論はざっくり言うと
「親から子に性質が受け継がれていく」というものです。ゲイの場合を考えるとゲイであることは子孫を残しにくいので、ゲイの数はどんどん減っていきゲイはほとんどいなくなってしまう
はずです。
ところが、今でもゲイは多くいます。 これが進化論的な**「ゲイの矛盾」**です。

上昇婚仮説

そんな進化論的なゲイの矛盾に関する答えとして**「上昇婚仮説」(hypergyny仮説)という仮説が考えられています。
それは
「男性ではゲイになる遺伝子が女性の場合は繁殖力を上げる」**ということです。

どういうことかというと、男性と女性で同じ遺伝子が別の働きをします。そして、男性の場合にはゲイになり、女性の場合には繁殖力を上げる=子沢山になるということです。
このようにして、このゲイになる遺伝子は男性の方では引き継がれませんが、女性の方から多く引き継がれるという考えです。

ゲイ遺伝子

つまりゲイ自身は遺伝子(子孫)をあまり残さないために、ゲイ遺伝子は母親から伝わってくるということです。

上昇婚仮説の根拠

この上昇婚仮説の証拠として、ゲイでない人(異性愛者の男性)とゲイの母方の親族を調べた場合には、ゲイの親族の方がより子沢山でした
そして、ゲイの親族の中でも母方の方が父方よりも子沢山でした。
このことから**「男性ではゲイになる遺伝子が女性の場合は繁殖力を上げる」**ということが言えます。

ゲイを比較した家系図

ただし、ここまででは**「上昇婚」**の意味がわかりません。
上昇婚とは、貧しい女性が裕福な男性と結婚することで社会的・金銭的に豊かになる=上昇することです。

そして上昇婚仮説とは**「社会的な階層化が強い社会、上昇婚がある社会において同性愛を促す遺伝子が働く」**ということです。

これは先ほどの「男性ではゲイになる遺伝子が女性の場合は繁殖力を上げる」と、女性は「上昇婚がある場合には、女性はより魅力的になろうとする」という考えがあわさったものです。
実際に「上昇婚」がある場合には女性がより繁殖力が上がる=子沢山になることがわかっています。

そして上昇婚があるということは、社会に階級があるということです。
そのため、社会的な階層化が強い場合には男性愛を促す遺伝子が働くということです。
実際にさまざまな社会とゲイの数を調査した結果、社会的な階層度とゲイの割合が比例していたという結果が出ています。

補足:誤解がないように付け加えると、「社会的な階層化によって男性にストレスがかかってゲイになる」わけではありません。言ってしまうと女性の繁殖力を上げるために働く遺伝子が偶然男性の場合にはゲイになるということです。

ゲイの動物はいるのか

上昇婚仮説が正しいとすれば、動物のゲイは考えにくいです。社会的な階層をつくる動物もいますが、「上昇婚」という発想を動物はもたないからです。

それでも「動物のゲイはいる」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし野生動物でゲイが存在したという証拠はありません
たしかに**「オス同士での性行動」は数百種類の動物で確認されています。ただしそれは「メスのパートナーを獲得できなかったオス」などであり「性的に好んでオス同士で性行動」を行なっている動物は確認されていません**。
よって、厳密な意味でのゲイは自然界には存在しません。

ゲイはいつから存在したのか?

では、人類ではゲイはいつから存在したのでしょうか。
これにも諸説あります。
たとえば、数千年前のまだ文字もなかった先史時代からゲイは存在したという説もあります。
なぜ文字もなかった時代にそんなことが言えるのかというと、ゲイを描いた壁画があるということです。

Cueva de la Viejaの壁画

これはスペインの壁画で**「中央の男の勃起したペニスを小さい男がフェラチオしている」**と言われています。
しかし、これにも反論があります。
もう少し拡大してみましょう。
(赤い矢印が小さい男、緑の矢印が中央の男のペニスと考えられます)

ゲイの疑いがもたれている部分を拡大

この小さい男の顔の向きが左を向いていれば中央の男のペニスに顔を近づけているようにも見えます。
しかし、頭の向きはペニスと逆であり、弓矢も持っており無関係であるという主張もあります。
確かに、顔は左(ペニスの方)を向いているようにも見えますが、右を向いているようにも見えます。

他にも同様にゲイを示したと考えられる壁画はありますが、同様に反論もされており、先史時代からゲイがいたという確かな証拠はありません。

また現代でもインドネシアのアロローゼ族などでは同性愛は認められていないという研究もあります。

このようにゲイの存在はやはり**「階層化された社会」**によって出現した可能性が考えられます。

ゲイ遺伝子の実際

このように理論的にはゲイには遺伝+社会的環境が関連していると考えられていました。
そして実際に遺伝子解析を行った研究では、複数の遺伝子がゲイに影響するということがわかりました。
「複数の遺伝子」というのは、単に一つの遺伝子ではなくいくつもの遺伝子によってゲイになるかどうか左右されるということです。

ゲイ遺伝子のイメージ

遺伝による強さを示す指標として遺伝率というものがあります。身長などは80%と高い遺伝率を示します。一方で左利きの遺伝率は24%です。
そして**ゲイの遺伝率は32.4%**と、遺伝要素として高くはありません。

両親ともに右利きでも左利きの子供が生まれるように、両親ともに異性愛者でもゲイが生まれることがあるということがわかります。

また、この**ゲイに影響する遺伝子はタバコの使用や性格・うつ病などに影響する部分と重なっていました。つまり、ゲイの人に特徴的な性格というのがありうる、ということです。
一方で身体的特徴でゲイの遺伝子はとくに関係ありませんでした。

まとめ

ゲイは病気かで「ゲイは左利きのようなもので病気ではない」とご説明しました。
同時にゲイも左利きのようにある程度は遺伝します。
また、上昇婚仮説のように社会的階層化が進んだ状態であることがゲイ遺伝子を働かせる可能性があります。

しかし上昇婚仮説があくまで「仮説」であるように。ゲイについてはいずれも十分な研究が進みきっていない状態ですので、今後また新たな発見があるでしょう。

【参考文献・画像引用】 壁画:Lugares con Historia PLoS One. 2015; 10(8): e0134817.
Proceedings of the Royal Society London, B 271: 2217–2221.
Science Vol. 365, Issue 6456, eaat7693

老木医師

監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長

医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています