
監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長
医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています
更新日:2021年05月25日
骨盤底筋は性にまつわる筋肉としてよく知られています。
「骨盤底筋を鍛えると精力が強くなる」
「骨盤底筋が弱っているから勃起がうまくいかない」
という話も聞きます。
一方で、具体的に骨盤底筋はどこにあるかを指差せる方はあまりいません。
ここでは、骨盤底筋がどんなものか、骨盤底筋を鍛えると本当に良い作用があるのか、どういったトレーニングで骨盤底筋を鍛えられるかをご説明します。
(男性と女性で骨盤底筋には違いがあります。ここでは男性の骨盤底筋についてご説明します)
そもそも骨盤は、腰にある骨のことです。
腰でお椀のように広がる骨で、体のすべての臓器の支えとなっています。
そのため、骨盤には非常に多くの筋肉がついています。
ただし、このすべてが骨盤底筋ではありません。
骨盤底筋とは、骨盤の「底」にある筋肉ということです。
たくさんある骨盤周りの筋肉の中で、骨盤底筋と言われるのは、一部だけです。
そして、「骨盤底筋」は、より正確には骨盤底筋**「群」といういくつかの筋肉の集まりです。
その中で、代表的なものとしては肛門挙筋**があります。
まず、この骨盤底筋が具体的に何を指しているのかを理解することが大切です。
では、これらの骨盤底筋は体の中でどのような働きをしているのでしょうか。
わかりやすいのは、骨盤底筋のうちの外肛門括約筋です。外肛門括約筋がなければ、大便が垂れ流しになってしまいます。
意識はしていなくても、体がまっすぐを保つ時などには、他の骨盤の筋肉と同様に骨盤底筋も働いています。
ここでわかりやすいのは、球海綿体筋です。
骨盤底筋の中ではもっとも触りやすい筋肉です。ご自身のペニスの付け根の下を触ると少し盛り上がっているのがわかると思います。そこが球海綿体筋です。
より一般的な呼び方では、「蟻の門渡り(とわたり)」と言われる場所でもあります。
この、球海綿体筋は、勃起時に触ると硬くなっているのがわかると思います。
つまり、球海綿体筋は勃起を支える筋肉でもあるのです。
また、射精の際にもこの球海綿体筋が働きます。
骨盤底筋の働きが悪い=筋肉が衰えると、さまざまな不都合があります。
性に関連するものとしては、射精が上手くできない、オーガズムが不十分になる、勃起不全になるなどがあります。
このように、骨盤底筋はさまざまな役割を果たしています。
骨盤底筋を鍛えるとどんなメリットがあるのか、「性」に関することだけでも
より硬くなり、ED改善の効果があります。
射精の勢いが強くなります。
射精時の快感がより強くなります。
骨盤底筋のトレーニングというと、よくこの筋トレが紹介されます。
しかし、ここまで読んできた方ならこのトレーニングのどこが間違っているのかわかるのではないでしょうか。
このトレーニングは骨盤「まわり」の筋肉に効くトレーニングです。
はじめにご説明したとおり、骨盤にはたくさんの筋肉がついています。ただ、そのなかで骨盤「底」筋は一部です。
このトレーニングは骨盤底筋をメインのターゲットとはしていません。
骨盤底筋を鍛えようと思っている方は**「ケーゲル運動」**という名前を聞いたことがあるかもしれません。
**「ケーゲル運動」というのが世界でもっともよく知られている骨盤底筋の鍛え方です。
もともと「ケーゲル運動」**とは、50年以上前に女性向けに考えられた伝統的な骨盤底筋の鍛え方です。
その後「ケーゲル運動」という名前はだけは広く広まりましたが、正しいケーゲル運動の方法はあまり広まっていません。
本来のケーゲル運動とは、このような器具を膣のなかに入れて、膣で締め付けるという筋トレのことでした。
しかし、男性の場合はこのような器具を入れることはできません。
(出来なくもないですが、基本的にはできません。)
そのため、骨盤底筋を鍛える際に「正しい」ケーゲル運動を行うのは難しいです。
それでは、実践的な骨盤底筋の鍛え方をご説明します。
骨盤底筋を動かす代表的な感覚はこれらの際に意識されます。
なかなか動いているか分からない方は、自分の球海綿体筋(蟻の門渡り)を触ってみてください。
なかで筋肉が動いていれば正しいです。
ポイントは
これだけです。
誤った骨盤底筋のトレーニングが広まる理由の一つには、骨盤底筋のトレーニングがとても地味ということもあると思います。
骨盤底筋は、腕などの体の表面の筋肉とは違って負荷をかけることができません。
そのため、負荷が軽いので、筋肉を鍛えるためには回数をこなす必要があります。
筋肉として鍛えるためには1日300回が必要です。
しかし、1日のなかのまとまった時間に300回を行うのは難しいでしょう。
そこで、骨盤底筋のトレーニングの地味さが、メリットにもなります。
たとえば、あるサラリーマンの方は信号待ちの際に骨盤底筋のトレーニングをすることを習慣にしました。
このように、骨盤底筋のトレーニングは人知れず生活のなかで行うことができます。
【参考文献】
Sexual Medicine Reviews VOLUME 4, ISSUE 1, P53-62, JANUARY 01, 2016
Sexual Medicine REVIEWs| VOLUME 4, ISSUE 2, P136-148, APRIL 01, 2016
理学療法学 第 35巻 第 4 号 212 〜215
日本性科学会雑誌 23(1): 68-79, 2005
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