
監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長
医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています
更新日:2021年05月25日
「自分は早漏なのではないか・・・」
と悩む方は実際多いです。
実は、早漏が性に関する男性の悩みで一番多いとも言われています。
これまでの研究でも早漏の男性の割合は**4%~39%**と言われています。
多いような気もしますが、4%〜39%というのはかなり数字に幅がありますよね。
これは、早漏の定義が医学的にも曖昧なことが理由です。
それでは、医学的に早漏がどういうものかみていきましょう。
医学的に早漏というのは、簡単にいうと
**”挿入の約2分以内に射精してしまい、射精を我慢できず、そのことで苦痛やストレスなどのネガティブな感情を抱くこと"**です。
これを詳しくみていくと、早漏の三角形というものがありますす。
三角形はそれぞれ、時間・コントロール・苦痛からできています。
この三つのすべてがある状態を医学的に早漏と言います。
先ほどの定義にあわせてみると、
時間:挿入の約2分以内
コントロール:射精を我慢できず
苦痛:苦痛やストレスなどのネガティブな感情
の3つを満たしています。
逆にいうと、この3つのどれか一つでも満たしていなければ早漏とは言いません。
たとえば、挿入してすぐに射精をしてしまっても、それについて悩んでいなければ早漏ではありません。
その他にも射精を我慢できずそれにストレスを感じていても、それが挿入後30分後であれば、早漏とは言いません。早漏ではなく、認識の改善(通常は挿入時間30分は長い)が必要です。
早漏について考えるときに一番問題になりやすいのが時間ですので、詳しくみてみましょう。
時間は他の2つと違って数値として計測可能ですので、一番意識されます。
ただし、この時間が専門家の間でも意見が分かれているところです。
さきほど**「約2分」**が時間の目安とお伝えしたのですが、これが1分と言う医師もいますし、時間は絶対的な時間ではなく、性行為のパートナーが短いと感じるかと言う医師もいます。
このため、医学的にも早漏の定義が曖昧になっています。
ひとつの目安として、約2分がいまのところ妥当と考えられています。
それでは、早漏の原因としてはどんなものが考えられるのでしょうか。
実際のところ、早漏の医学的なメカニズムはまだまだ研究途中です。
そのため、わかっていないことも多いのですが、そのなかでも早漏の原因は大きく先天性と後天性に分けられます。
先天性の早漏とはつまり生まれつきの早漏です。人生で初めての性行為の時から常に早漏である場合は先天性の早漏と考えられます。
早漏はある程度遺伝することがわかっています。つまり、早漏の方のお父さんもまた早漏の可能性が高いのです。
逆にこのことから分かるのは、早漏は心理的な原因ばかりが考えられますが、早漏は体質によるものもあるということです。
心理的なもの以外で現在考えられている主な早漏の原因は
陰茎小帯が短い
脳神経的なメカニズム
ED
が考えられています。
それぞれについて詳しくてみてみましょう。
初期の性的経験、性的テクニック、性交の頻度、不安といった心理的な影響です。
メカニズムとして、不安を感じると交感神経系が活性化されます。交感神経は生物がピンチに陥った際に心拍数などを上げて体を活発にする自律神経です。
そして、射精もまた交感神経によって引き起こされます。
そのため、交感神経が活発になることで、射精が促され射精が早くなってしまうのです。
また、性的なこと以外でも職場や家族に対する不満といった日常的なストレスが大きい方が早漏になるというデータがあります。
先ほどのメカニズムを考えれば、「性行為」に関する意識以外でも、交感神経を活発化するような心理的な要素があれば早漏になりやすいということがわかりますね。
ストレス社会の影響がこんなところにまで見られるのです。
陰茎小帯とは、亀頭と包皮を繋いでいるひも状のものです。
模式的な図を描いています。
ペニスを足元から見上げた図で、赤い線が陰茎小帯を表しています。
陰茎小帯が短いと、勃起の際に亀頭が引っ張られることで、通常よりも亀頭がパンパンに圧力がかかります。
そのため、亀頭がより敏感になり早漏になりやすいと考えられています。
脳のなかでセロトニンという物質は射精を抑える作用があります。
そして早漏の方はセロトニンが多くなりやすい体質にあります。
この脳の中の問題を解決するために、脳内に作用する薬を早漏の治療に使うのが現在のもっともスタンダードな早漏の治療です。
EDは早漏の原因になりますが、早漏もEDの原因になります。
EDと早漏は密接な関係にあります。
EDを持つ男性のほぼ半数が早漏も経験しています。
早漏とEDの関係について詳しくてみていきましょう。
EDの方の場合、勃起がおさまる前に射精してしまおうと性交を「急いでしまう」ことがあります。
すると当然ですが、短い時間で射精してしまうことになります。
このため、早漏になってしまうのです。
逆に早漏の方は、射精を遅らせようとしてわざと性的興奮度を下げようとしがちです。
たとえば、性交の最中に、「今日の晩御飯は何を食べようかー」などと関係のないことを考える、などです。
しかし、これも一歩間違えると性交の最中で勃起しなくなる、いわゆる中折れ、という状態=EDになってしまいます。
このように、EDと早漏はお互いに作用します。
では、どちらを先に治療するのがよいのでしょうか。
これについては、米国泌尿器科学会が先にEDの治療をすべきとしています。
理由としては、早漏の治療は、EDを悪化させうるからです。
そしてED治療薬は、早漏を直接改善することも指摘されています。
そのため、ED治療薬を使うことでEDと早漏が同時に改善する可能性があります。
「自分は早漏ではあるけれどEDではないから」
と思っている方にも、やはりまずはED治療薬が推奨されます。
その理由としては、「EDだと気づいていないだけ」の可能性があるためです。
早漏の定義:挿入時間が短く(2分未満)、射精をコントロールできず、それに苦痛を感じている状態
早漏には先天性の早漏と後天性の早漏がある
早漏の原因には、心理的原因、脳神経のメカニズム、ペニスの構造、EDなどがある
早漏とEDの関係:まずはEDの治療を。EDの治療にはED治療薬を
正しい知識を身につけて上手に医療と付き合っていきましょう。
【参考文献】
J sexual medicine VOLUME 8, SUPPLEMENT 4, 316-327, OCTOBER 01, 2011
J sexual medicine VOLUME 3, SUPPLEMENT 4, 303-308, SEPTEMBER 01, 2006
泌尿器外科 2019年 32(6),833~837
Journal Sexual Medicine VOLUME 8, ISSUE 8, P2135-2143, AUGUST 01, 2011
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監修 老木悠人 医師
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