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前立腺がんとED

ホルモン療法の副作用

更新日:2021年05月13日

前立腺がんのホルモン療法による性機能障害(ED・性欲減退など)

はじめに

ホルモン療法は、前立腺がんの早期〜転移した例まで非常に広く使われます。
体全体のことから考えれば手術よりも負担が軽いと言えます。
一方で、性機能という観点から考えれば、非常に多くの副作用があります。

前立腺がんの治療につきもののホルモン療法がどんな性機能障害を引き起こすのか、についてみていきましょう。

ホルモン療法で起きうる性機能障害の種類

はじめにざっくりと、ホルモン療法とは男性ホルモンを抑えることで前立腺がんが育つのを抑えることです。
そのため、内科的去勢とも言われます。
(内科的があるということは「外科的」もあります。外科的去勢とは、文字通り精巣をとってしまうことです。現在は多くの場合は「内科的去勢」が行われます) まさに「去勢」と言われるように、男性の性機能は抑えられてしまいます。
そのため

  • ED:勃起不全
  • オーガズム減退:射精しにくくなる
  • 不妊
  • 性欲減退
  • ペニス・精巣の萎縮
  • 女性化乳房:乳房(おっぱい)が膨らむ

などが起きえます。
順番に詳しくみていきましょう。

ホルモン療法によるED

ホルモン療法によってEDは引き起こされますが、その割合ははっきりとしていません。
ホルモン療法を受けた方の**91%**がEDになったとの報告もあります。

ホルモン療法によるEDの治療

ホルモン療法によるEDに関しては、ホルモン療法の中断によって回復します。
しかし、実際にはホルモン療法の中断が難しい場合も多いです。
そのような場合には、一般的なED治療薬(バイアグラなど)約40%の方に有効です。

オーガズム減退・不妊

ホルモン療法をうけているとペニスの感度が下がる可能性があります。
また手術や放射線療法と同様に、ホルモン療法でも射精量は減少していき、最終的にはほぼなくなります
これらによって射精時のオーガズム(快感)など性的な満足度が下がってしまいます

また、射精がなくなることは不妊にもつながる問題です。

不妊の治療

ホルモン療法による不妊に対する治療法としては精子バンクの利用があります。
精子バンクとは、ホルモン療法療開始前に精子を冷凍保存することです。
前立腺がんの方は年齢とともに増えます。そのため、前立腺がんは50代以上の方が主です。
そのため、気にされない方も多いのですが、やはり不妊が気になるという方は精子バンクを検討しましょう。

性欲減退

もともと性的欲求があった人でもホルモン療法を受けると約半数は性への関心がなくなります
性欲減退は性機能障害についてプラスに働くこともあります。
というのは、そもそも性欲がなければたとえEDでも問題にならないからです。

そのためご本人にとっては気にならない場合もありますが、パートナーとの関係が問題になることがあります。

ペニス・精巣の萎縮

これは他の性機能障害とはやや違います。
直接的に性機能障害を引き起こすわけではありませんが、ペニスや精巣が小さくなることがあります。
また、ホルモン療法によって体重の増加や筋肉の減少が起こりえます。そのため、腹囲の増加つまり、お腹が大きくなります
そうすると実際にペニスが小さくなるだけではなく、大きくなったお腹によってペニスが見えなくなる・小さく見えるということが起きます。

そのため、直接的に男性の性機能に問題はありませんが、男性としてのボディイメージを損なうこと言い換えれば男性らしさを失うことで精神的に性的な行為にネガティブになることがあります。

ペニス・精巣の萎縮の治療

ただし、リハビリによってペニスのサイズが維持できるとも言われています。
リハビリとは陰茎リハビリテーションという勃起を促す方法です。
具体的には次の前立腺がんによるEDの治療にてご説明します。

女性化乳房

女性化乳房

これも「ペニス・精巣の萎縮」と同様に直接的に性機能障害を引き起こすわけではありません。
文字通りおっぱいが女性のように膨らむことです。
こちらも直接的に男性の性機能に問題はありませんが精神的に性的な行為にネガティブになることがあります。
一方で、なかには膨らんだ乳房をそれこそ女性のように性感帯の一種として受け入れる人もいます。

女性化乳房の治療

ただし、どう受け取るかは人によって違いますので、どうしても膨らんだ乳房が嫌という方の治療としては、予防的に放射線治療を行うことや、すすんでしまったあとには乳房切除術や脂肪吸引など外科的にとってしまう方法があります。

パートナーとの関係性の問題

ここまでそれぞれの性機能障害についてみてきました。
しかし、一貫して問題となるのはご本人だけではなく、パートナーとの関係性の問題です。

もともと、ホルモン療法ではうつ傾向が出てきたり、イライラしがちなど感情的に不安定になります。
そこに、こういった身体的な影響が出るために、男性としての自信がなくなる精神的な影響もあります。
そして、性的な関係が困難になることからパートナーとの関係が悪くなることがあります。

パートナーとの関係改善のためにどうするか

まず、当たり前のようですが話し合うことです。
治療を受けた本人よりもパートナーの方が話し合いを望んでいることが多い一方、本人が話したがらないということが多いです。
そのため、少しでも話し合いをしましょう。
いきなり性的なことを話すのが難しければ、不安なことなどから話し合ってもよいでしょう。

また、性的なことによりフォーカスをすれば
挿入以外の性的な行為をする、性的補助具(おとなの玩具)を使うことなどが解決法としてあります。

おとなのおもちゃ

性的な行為としては挿入やペニス以外の刺激もあります。
たとえば女性化乳房のところでもご説明したように、胸や乳首への刺激というのも性的な刺激としてはあります。

またいまは、さまざまな性的補助具(おとなの玩具)があります。
ペニスは挿入は難しくなってしまったけれど、ペニスのかぶせる形のおもちゃ(ディルド)を使うことによってオーガズムが可能になった男性もいます。

このように、体をどう対応させるか、というより体の現状を受け入れてどう生活で対応していくかということを考えていきます。

まとめ

  • ED:ED治療薬
  • オーガズム減退・不妊:精子バンク
  • 性欲減退
  • ペニス・精巣の萎縮:陰茎リハビリテーション
  • 女性化乳房:予防的に放射線治療か手術
  • パートナーとよく話し合い、挿入以外の性行為やおとなの玩具の検討も

【参考文献・画像引用】
Int J Urol. 2010 Aug;17(8):689-97
JSM  VOLUME 7, ISSUE 9, P2996-3010
女性化乳房の画像:JSM VOLUME 7, ISSUE 6, P2273-2279, JUNE 01, 2010

老木医師

監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長

医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています