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前立腺がんとED

前立腺がんの治療による性機能障害(ED)

更新日:2021年05月13日

前立腺がんの手術・放射線治療によるED(性機能障害)の割合・経過

はじめに

EDなどの性機能と前立腺がんは非常に密接な関係にあります。
しかしながら、前立腺がんの治療を主にされる医師から性機能に関する説明はあまりされることがありません。

たとえば、前立腺がんの手術後に勃起機能に問題がない方は20~25%と、問題がない方が少ないです。さらにホルモン療法を受けるとより性機能は落ちてしまいます

ここでは、前立腺がんの根治的な治療である手術と放射線治療によって前立腺がんによってどんな性機能障害が引き起こされるのか(ED、射精障害)、前立腺がんの治療による性機能障害などについてご説明します。

前立腺がん自体はEDの原因になるのか

性機能障害の代表的なものとしてEDがあります。

実は、前立腺がんの方の2人に1人がEDです。
ただし、これは前立腺がんによってEDが引き起こされるわけではありません
前立腺がんの方は年齢層が高いために、年齢によって引き起こされるEDとなります。
そのため年齢を考慮すると、EDの方の割合は一般的な人の割合と同じになります。
そのため、前立腺がん自体がEDを引き起こすとは言えません

前立腺治療による性機能障害

前立腺治療は主に

  • 手術
  • 放射線治療
  • ホルモン療法

の3つがあります。
大きな違いとして、発症する性機能障害の種類EDになる時間経過の違いがあります。
実はもっとも性機能障害を引き起こすのはホルモン療法ですが、ここでは根治的な治療である手術や放射線治療がどのような性機能障害を引き起こすのかをみていきます。

前立腺がんの手術による性機能障害

前立腺がんの手術による性機能障害で問題となるのはEDと射精障害です。

手術によるEDの特徴として

  • 手術の仕方によってEDのなりやすさが違う
  • 手術直後がもっともEDになりやすく、その後徐々に改善する

また射精障害として

  • 手術によって前立腺などを取るため射精できなくなる
  • ドライオーガズムは可能であるがオーガズム減退がある

があります。
具体的にみていきましょう。

なぜ手術で射精障害になるのか

射精のメカニズムでみたように、前立腺の中を通って精液は射精されます。
そのため前立腺をとってしまうと、精液が射精されなくなります
ただし、射精とオーガズムは別であり、射精をしないオーガズムつまりドライオーガズムは可能です。

手術でなぜEDになるのか

前立腺のまわりには勃起など性機能に関係する神経がはりめぐらされています
できるだけこの神経を傷つけないように手術は進歩はしてきましたが、この神経は個人差が大きく,複雑なために完全に傷つけないことは難しいです。
主にこの神経が傷つくことによってEDが引き起こされます。
また、直接神経が傷つくだけではなく、手術中に神経が引っ張られるなどの刺激をうけることも悪影響があるとわかっています。
そのため、特に手術直後がもっともEDになってしまいます。
そして、前立腺の周りの神経のなかでも陰茎海綿体神経の損傷は陰茎海綿体の萎縮・線維化を引き起こします

時系列に整理すると

  • 手術直後:手術の刺激で一時的なEDになりやすい
  • 手術自体:勃起する神経の損傷でEDになる
  • 手術のしばらく後:神経が傷ついたために海綿体自体が萎縮する

ということです。

手術の種類によるEDの割合

ここまでみてきたように手術でも神経を傷つけなければ、EDになりにくいということです。
つまり、細かな手術の方がEDにはなりにくいです。

具体的に手術の種類ごとの術後1年時点のEDの割合としては
ロボット手術(25%) ≒ 腹腔鏡手術(25%) > 開腹手術(50%) です

ロボット手術が最新の手術方法として期待はされていますが、現状ロボット手術と腹腔鏡手術のED発症率は同じです。
ただし、どちらも開腹手術よりはEDになりにくいです。

手術後の具体的な経過

手術後のEDの割合についてはさまざまな研究があります。
ここでは術後の経過がわかる一例をご紹介します。
ただしこれは「開腹手術」の例です。

手術と放射線のEDの割合グラフ

これは手術(青)と放射線治療(緑)を受けた人で、SEXをするのに十分勃起した人の割合です。
つまり人数が多い方が好ましいということです。
手術では、治療前 66% > 6カ月後 12% > 3年後 21% > **6年後 17%**となっています。

先ほどご説明したように、手術後すぐが一番EDとなります。
ただし手術「直後」と言っても、回復するのには1-2年ほどかかることが多く、中には3年かかる方もいます。
またある程度改善しても、手術前まで勃起機能が戻る方は少ないです。

放射線療法による性機能障害

(ここではFocal therapyではない放射線療法をさします)

放射線治療で問題となるのもEDと射精障害です。
また、治療法の選択として放射線治療と手術はよく比較されますが、EDに関しては放射線治療と手術のどちらが優れているかという結論は出ていません
大きな違いとして放射線治療は射精障害は少ないこと、経過としてEDが徐々に増えることです。

放射線療法でなぜ射精障害になるのか

手術と同様に放射線治療でも前立腺にダメージを与えます。
ただ、放射線治療の場合、射精量は減少するものの完全になくなることは手術ほど多くはありません。

放射線治療でなぜEDになるのか

十分には解明されていませんが、主に海綿体への血流障害が影響すると考えられています。

放射線治療によるEDの具体的な経過

手術と放射線のEDの割合グラフ

先程の図を再度みてみましょう。
放射線治療(緑)も手術のものと同様に、治療後すぐ(6ヶ月後)がもっともEDではない人が少ない、つまりEDが多いです。
一方、違いとして手術は徐々にEDが回復していく一方で、放射線治療は徐々にEDの方が増えます
具体的には、治療前 68% > 治療 6カ月後 22% > 1年後 38% > **6年後 27%**となっています。

また、放射線治療で治療後すぐにEDの方が多い理由としては、放射線治療は術前ホルモン療法を行うためにホルモン療法による影響が出ています。

まとめ

前立腺がんの性機能にまつわることをご説明してきました。

  • 手術ではEDと射精障害が引き起こされる
  • 手術によるEDは手術の種類によって割合は違う
  • 手術によるEDは術後すぐがもっとも多く、年単位で徐々に回復していく
  • 手術と放射線治療はEDに関しては同等
  • 放射線治療は術前ホルモン療法によって術後すぐのEDが多い
  • 放射線治療は年単位で徐々にEDの方が増えていく

【参考文献・画像引用】
ED診療ガイドライン第3版
JSM  VOLUME 6, ISSUE 2, P498-504
治療法によるEDのグラフ引用:N Engl J Med 2016; 375:1425-1437
JSM | VOLUME 7, ISSUE 9, P2996-3010
アメリカ泌尿器学会 EDガイドライン

老木医師

監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長

医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています