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前立腺がんとED

前立腺がんの全体像

更新日:2021年05月13日

前立腺がんによるEDを考えるための前立腺がんの全体像

はじめに

前立腺がんとEDは非常に密接な関係にあります。
前立腺がんの方は治療前

ここでは前立腺がんとEDの関係について理解するための前提知識として、前立腺がんがどのような病気か、前立腺がんの診断・治療はどのように行われるのかの全体像を把握しておきましょう。

「前立腺がん疑い」の流れ

まず、前立腺は膀胱よりやや下にある臓器です。
前立腺の働きとしては、精液の一部である前立腺液を分泌し精子の働きを助けることです。

男性の生殖器の解剖図

前立腺がん自体は、2016年の前立腺癌罹患数は89,717人と胃がんの次に多い、男性にとってはよくある癌です。

では、どのように「前立腺がん」の流れにのるのかをみていきましょう。
前立腺がんといえばPSAです。
PSAが高いと前立腺がんを疑います
PSAとはProstate-Specific Antigenの略で日本語にしても前立腺特異抗原というだけで、体の中でとくにどういう働きをしているかははっきりとしていません。

PSAは主にがん検診などで検査されます。
前立腺がんは無症状であることが多いために、PSAを測定することではじめてわかることが多いです。
検査自体は一般的な採血で行われます。
50歳以上の方は住民検診で実施されていますので、もし50歳以上でうけたことがない方は一度確認してみてください。
そしてPSAを測定して高値の場合に前立腺がん疑いとなります。

前立腺がんの診断

前立腺がんの流れ

PSAが高く、前立腺がん疑いとなった場合に本当に前立腺がんがあるのか前立腺がんがあればどれぐらい進行しているのかを調べていくことになります。

前立腺がんの確定診断

大切なこととして、PSAが高くても前立腺がんではないことがあります。
PSAはあくまでも前立腺によくある抗原、というだけですので前立腺肥大症や前立腺炎でもPSAは上がります
そのため、PSAが高い場合に「前立腺がん疑い」となり、本当に前立腺がんがあるのかを確かめます。

まず上の図では**「前立腺がん疑い」であれば「超音波ガイド下針生検」となっていますが、多くの場合はそのまえにMRI**が行われます。
MRIとは画像検査の一つで、大きな磁石のような機械の筒に入ることで前立腺などを画像的にみるものです。

前立腺肥大のMRI画像

この画像は前立腺肥大の方のMRI画像ですが、このようにPSAが高い場合でもより前立腺がんを疑うか前立腺肥大のみかなどを診断します。
そしてMRIで前立腺がんが疑わしい部分があれば、その部分に対して超音波ガイド下針生検をおこないます。
「超音波ガイド下針生検」とは、超音波で前立腺を確認しながら前立腺に針を刺して組織を直接採取して癌があるかどうかを確かめる方法です。
これで癌が見つかれば、前立腺がんの進行度=病期診断になります。
ここで癌が見つからなかった場合には、どれぐらいPSAやMRIなどで前立腺がんが疑わしいかによって再検査や経過観察へとなります。

前立腺がんの進行度診断

前立腺がんに限らず、基本的ながんは**「限局性癌」「局所進行性癌」「転移性癌」**に分けられます。

がんの一番怖いところは全身に広がりうることです。
そのため

  • がんが原発(この場合、前立腺)だけでとどまっている=「限局性癌」
  • その場から少し周りに進行し始めている(この場合、前立腺のとなりにある膀胱など)=「局所進行性癌」

*遠くまでがんが広がっている(この場合、骨など全く別の臓器)=「転移性癌」

のいずれか診断します。
そして、その進行度によって治療方法が変わります。
病期診断にはこれ以外に、前立腺がんの種類自体がどのようなものか、つまり進行しやすい前立腺がんか、進行しにくい前立腺がんかも判断に含まれます。

前立腺がんの治療

前立腺がんのステージと治療

前立腺がんの治療は、さきほどの病期の分類によって決まります。
簡単に言えば、**「前立腺にがんがとどまっていれば、摘出してしまう」**ということです。

今回、説明をはじめた前立腺がんとEDとの関係で言うと、この前立腺がんの治療が非常にEDと関係しますので、それぞれの治療法について少し詳しくみていきましょう。

Focal therapy

Focal therapy = 局所療法です。
Focal therapyは新しい治療法であり、いまだに再発率などで不確かな部分もあります。
そのため、一般的な治療法とは言い難いです。
Focal therapyにはいくつか種類がありますが、もっとも一般的な方法としては**放射線を放出するカプセルを前立腺の内部に埋め込む「小線源療法」**があります。

手術療法

手術療法は手術をして前立腺を手術でとってしまうことです。
大きく種類としては

  • 恥骨後式前立腺全摘除術(RRP):いわゆるお腹をあける手術
  • 腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP):小さな傷跡だけでカメラを見ながらする手術
  • ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARP):ロボットで細かな操作をする手術

ロボット手術

この順番に新しくなっています。
基本的には、新しい方が体への負担が少なくなっています。
ただし、ロボットによる手術はまだ新しく日本でも使用できる施設が限られています。

放射線療法

放射線療法は、前立腺に放射線をあてることで癌を殺す治療法です。
Focal therapyとの違いとしては、一般的な放射線療法では、より前立腺全体や前立腺の周りの臓器まで放射線をあてることでよりしっかりと治療を行うことです。
ただし、より広い範囲に放射線を当てることで効果もありますが、副作用も大きくなります。

放射線治療

放射線治療のメリットとしては、体にメスを入れるわけではないので、体の負担が軽いことです。

ホルモン療法

ここまでは、前立腺に限局した癌に対してどのような治療が行えるかという話でした。
ホルモン療法はそれとは異なり、前立腺がんそれ自体はもちろんですが、全身に対して効果を発揮します。
そして、ホルモン療法は他の治療(手術など)と併用されることも多く、また再発防止目的に長期間続けられることもあるため、前立腺がんの治療のネックになっています。

前立腺がんは男性ホルモンであるアンドロゲンの作用によって成長します。
そのため、男性ホルモンを抑えることで前立腺がんを抑えることができます。
この治療法は内科的去勢とも言われるように、性機能の働きを悪くします

ホルモン療法を受ける方の90%以上が性欲の低下やEDを発症します。

まとめ

前立腺がんとEDについて考えるために、まず前立腺がんの全体像についてご説明します。

  • 前立腺がんは無症状のためPSAで「前立腺がん疑い」となる
  • 前立腺がんの診断はMRIや針生検で「前立腺がん」される
  • 前立腺がんと診断されると「病期診断」にて全身に広がっているか確認される
  • 前立腺がんの治療としては大きく、放射線治療、手術、ホルモン療法がある
  • ホルモン療法は男性ホルモンを抑えるためEDと密接な関係がある

【参考文献】
前立腺の流れ・治療の画像引用:前立腺癌診療ガイドライン2016 年版 腎と透析 89(1): 93-97, 2020.
前立腺のMRI画像引用:EUROPEAN UROLOGY VOLUME 77, ISSUE 4, P469-480
HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY 27(2): 135-140, 2020.

老木医師

監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長

医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています