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前立腺がんとED

前立腺がんの治療 によるEDの治療

更新日:2021年05月13日

前立腺がんの治療によるEDの治療〜陰茎リハビリテーションを中心に〜

はじめに

アメリカ泌尿器学会 EDガイドラインではこのように言われています。

前立腺切除術や放射線治療による前立腺がんの治療後に勃起機能の維持を望む男性には、治療後にPDE5阻害薬(バイアグラなどのED治療薬)を早期に使用しても、自発的な勃起機能を改善しない可能性があることを知らせるべきである

これは2つのことを示しています。

  • 前立腺がんの治療によるEDはなかなか治らない
  • 前立腺がんの治療によるEDの対応は早期のED治療薬の使用

これが今回お伝えすることの中心です。
前立腺がんの治療によるEDの治療について大切な陰茎リハビリテーションなどを含めて考えていきましょう。

以下、「前立腺がんの治療によるED」というと長くなってしまうので、以下「前立腺がんのED」と書いていきます。

自分でできる前立腺がんのEDの治療

自分でできる前立腺がんのED治療として

  • 骨盤底筋のトレーニング
  • 生活習慣の改善

があります。

骨盤底筋のトレーニングに関しては、専門家の間で効果がありそうだとは言われていますが、具体的にどれぐらい効果があるかははっきりしていません。
骨盤底筋のトレーニングの具体的なやり方はこちらでご説明しています。

生活習慣の改善は、一般的なEDと同様に前立腺がんのEDでも有効であるとわかっています。
運動など生活習慣の改善をこころがけましょう。

医療による前立腺がんのEDへの対処法

選択肢としては

  • ED治療薬(バイアグラなど)
  • 陰茎海綿体注射:ペニスに勃起を促す薬を直接注射する
  • 陰圧式勃起補助具:ペニスを吸引することで勃起させる器具

があります。
実用性も含めてもっとも使われるのはED治療薬ですので、ED治療薬についてご説明していきます。

ED治療薬はバイアグラ・レビトラ・シアリスの3種類があります。
ED治療薬自体についてはこちらからご確認ください。

前立腺がんのEDに対するED治療薬

まず、ED治療薬の使い方として2種類あります。

  • 勃起をさせたい時だけ飲む(頓服)
  • 毎日(毎週)飲む

一般的なED治療薬の使い方としては頓服です。
ED治療薬はペニスへの血流を増やすことで勃起を促します。
頓服でのED治療薬は前立腺がんのEDにも有効です。

陰茎リハビリテーションとはどんなものか

この陰茎リハビリテーションが毎日(毎週)決まってED治療薬を飲むことです。

陰茎リハビリテーションの目的は勃起機能の改善を目指すものです。
この根本的な改善を目指す点が一般的な頓服でのED治療薬の使用とは違います。
加えて、ホルモン療法でペニスのサイズが小さくなることをおさえる作用もあります。

陰茎リハビリテーションの効果

ここまで説明してきて肩透かしですが、実は陰茎リハビリの実際の効果ははっきりしていません。
**理論的には有効であるため、「陰茎リハビリはした方がいいだろう」**というのが現状です。

理論的には、手術や放射線で前立腺がんの治療によって長期間勃起しない状態が続くと陰茎海綿体が低酸素状態になり、海綿体が繊維化を起こすためにより勃起できなくなることがわかっています。
そのうえでED治療薬は、陰茎海綿体組織の保護作用があるため、専門家の間では陰茎リハビリテーションは有効であろうと考えられています。

しかし、陰茎リハビリの効果を確かめるためにプラセボ(偽薬)とED治療薬を1年間飲んだ人とで勃起能力を比較したところ、違いはありませんでした。
そのため、実際に効果があることは確かめられていないというのが実際のところです。

陰茎リハビリをどのように行うか

陰茎リハビリは効果もはっきりとしていないためにどのように行うかについても答えは出ていません。

ED治療薬のなかでもシアリスがいいのか、バイアグラがいいのか、期間は毎日飲むのがいいのか、週に1回飲むのがいいのか、答えはありません。

開始時期についても明白な答えはないものの理論から考えると少なくとも前立腺がんの治療開始と同時に開始することが推奨されています。

陰茎リハビリのやり方

ここまでみてきたうえでも少しでも陰茎リハビリをやりたいという方にむけて、現状で考えられる陰茎リハビリの方法をご説明します。
前提として、陰茎リハビリの効果はサプリ程度と考えておいてください。
(ただし、根治的ではなく頓服としてのED治療薬自体は効果はあります)

  • 薬:バイアグラのジェネリック 50mg(シルデナフィル)
  • 飲み方:週2回
  • 対象:軽度~中等度のED

この理由をご説明します。
バイアグラはED治療薬は他のED治療薬より神経保護作用があると考えられています。
また費用的にもバイアグラのジェネリックはED治療薬のなかでもっとも安いために続けやすいです。
飲み方は週2回で効果があったとの報告もあるので、週2回としています。
対象の「軽度~中等度のED」というのは簡単にいうと**「たまに勃起がうまくいかないがおおむね大丈夫」という方です。
より具体的にはEDのスコア
11点以上の方です。
これは、重症の方とごくごく軽症のEDの方では陰茎リハビリの効果が乏しいが、この軽度~中等度の方に限定すれば
陰茎リハビリは有効**な可能性があるからです。


前立腺がんのEDに対するED治療薬の問題点

ここまで前立腺がのEDにもED治療薬は有効であるというご説明をしてきました。
一方で、問題点としては前立腺がんの治療後の方はED治療薬に対して副作用が多い傾向があります。

下の表はバイアグラで副作用が起きた人の割合です。

一般人 手術 放射線治療
消化不良 4.81% 10.00% 21.14%
頭痛 11.15% 16.55% 17.11%
ほてり 10.45% 16.24% 12.43%
鼻詰まり 3.80% 6.93% 9.48%

ざっくりですが、手術を受けた人は一般の人よりも1.5~2倍副作用がでやすいです。
一方で、放射線治療を受けた人はもっと副作用が多いようにみえます。
もう少し詳しくみてみましょう。

次の表は放射線治療を受けた人がプラセボ(偽薬)とバイアグラを飲んで副作用が出た割合です。

プラセボ バイアグラ
消化不良 21.17% 21.14%
頭痛 9.28% 17.11%
ほてり 4.78% 12.43%
鼻詰まり 11.08% 9.48%

放射線治療を受けた人はプラセボでも副作用の割合が高いことがわかります。
このことから分かるのは放射線治療を受けた人は体への不安感が強い可能性があるということです。

ただ、いずれにしても前立腺がんの治療後の方はED治療薬に対して、一般の方よりも副作用が出やすいために、飲む際に注意が必要です。

とても大事な補足

ここまで前立腺がんに関わる性機能障害やその治療についてご説明してきました。
もしかすると、「前立腺がんの手術でそんなにEDになるなんて聞いていなかった!」と思われる方もいるかもしれません。

良くも悪くも前立腺がんの治療の中心は性機能ではありません
そのため「性機能」については前立腺治療の専門の先生たちはあまり詳しく説明されません。
性機能障害について詳しくご説明してきましたが、前立腺治療の選択をするうえでは**「がんを抑えること」が優先されます。
前立腺の治療を受ける際に疑問や不満があればセカンドオピニオンをうけるのはいい選択肢ではあります。
しかし、前立腺の治療をうけるあなたの命や体の最終的に面倒をみるのは、あなたの目の前にいる
担当の先生**です。

自分のことを棚に上げて言ってしまうとネットで解説をしている医師よりも、あなたの目の前であなたの体と向き合っている医師を信頼しましょう。
私の役割はそこで抜け落ちる部分のサポートができればと考えています。

【参考文献】
前立腺がんガイドライン
アメリカ泌尿器学会 EDガイドライン
ED診療ガイドライン第3版
Int J Urol. 2010 Aug;17(8):689-97

老木医師

監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長

医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています