
監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長
医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています
更新日:2021年11月28日
新型コロナウイルス(COVID-19)とEDの関係について医学的な研究が固まってきました。 新型コロナは咳や呼吸困難など一般的な呼吸器症状だけではなく、様々な症状を引き起こします。 また、感染した時に症状を引き起こすだけでなく、感染から半年経った後にも後遺症を引き起こすことが分かっています。
後遺症としては、気だるさや脱毛がよくいわれます。 しかし、性機能においても新型コロナは後遺症を引き起こします。 特にEDや不妊が問題となっています。 詳しくみていきましょう。
結論からいうと、新型コロナに感染するとEDになるリスクが約5倍上がります。
この原因として
物理的な影響
精神的な影響
があります。
EDの主な原因は血管の障害です。 勃起はペニスの血管が広がり、海綿体に十分な血液が入ることで引き起こされます。 逆に、ED(勃起不全)はペニスの血管が広がらないことで引き起こされます。
新型コロナは感染して人体の細胞に侵入する際にACE2受容体というタンパク質を利用します。 そのため、ACE2受容体が豊富な場所でより新型コロナによる症状・障害が出やすいと考えられています。
ここで注目すべきは血管にもACE2受容体が豊富な点です。 このために血管自体が新型コロナによって障害され、EDを引き起こす原因となると考えられています。
新型コロナは直接的な影響以外でも、新型コロナによって変わった社会状況、いわゆるコロナ禍による精神的な影響が大きいです。
コロナ禍によって世界的にうつ病や不安障害が増えました。 そして勃起などの性機能は自律神経の影響が大きいこともあり、うつなど精神的に不安定な状態はEDの原因となります。
これはトルコの泌尿器科を受診した患者さんの割合を調べたものです。 コロナ以前に比べて、EDでの受診が増えています。 また、わずかではありますが不妊や早漏での受診も増えています。
これ以外にも、特に大都市圏においてはコロナ禍において性交の頻度が40%低下していました。 性交に関しては人との交流が減ったためと考えられますが、性交だけでなく自慰行為の頻度も14%低下し、性欲も31%低下していました。 また性機能が低下した人は、不安感が強くなっていたことや収入が減少している傾向が強いことがわかっています。
今回、コロナ禍で不安感やストレスがかかったことによって、新型コロナウイルスの直接的な影響以外でもEDや性機能障害が増えたと考えられます。
先ほどのグラフでは、不妊で受診する人はコロナ禍でもあまり増えていませんでした。しかし、不妊はなかなか気付きにくい問題です。
より直接的に精子について調べた研究があります。 新型コロナに感染したのち、約2ヶ月経過した状態でも精液の量は半分ほどに減った状態が続き、精子の量も1/3ほどに減少したという結果でした。
精子をつくるサイクルは2ヶ月ほどあるため、このあとに精子や精液の状態が改善してくるのか、状態が悪くなったままなのかは、まだ分かりません。
新型コロナの後遺症に対する治療法は現在のところありません。 唯一の対処法としては、新型コロナワクチンを打つということです。 まだ十分な検証が済んではいませんが、新型コロナワクチンによって後遺症が改善したという報告がされています。 そのため、新型コロナに感染した人もワクチン接種をすることで、より後遺症が軽くなることが期待できます。
新型コロナによって、物理的に血管の機能が落ちることや精神的な影響からEDなどの性機能の低下が引き起こされます。 今のところ、新型コロナの後遺症の治療法はありませんので、一番の対処法は、感染しないようにすることです。
なかなか落ち着かない生活が続きますが、がんばりましょう。
参考文献
ACE2受容体の図 引用:BMJ 2021;374:n1648
後遺症のグラフ 引用:Sex Med Rev. 2021 Sep 20 doi: 10.1016/j.sxmr.2021.09.002
精子のグラフ 引用:Reproduction 2021 161(3):319-331
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監修 老木悠人 医師
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