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キメセクとは

更新日:2021年05月25日

薬物とセックス、いわゆるキメセクは本当に気持ちいいのか

はじめに:キメセクとは

快感を求めるのは人間の欲求の一つです。 そして快感の中で代表的なものが性的な快感です。性的な快感を追求するにはいくつかの方法があります。

まず前提として快感を感じるのは性器などへの刺激を通じて脳です。 それを踏まえると要素としては体内と体外、物理的刺激と精神的刺激に分けられます。体内とは自分の体の中に作用するということです。

セックスに関する4象限

分かりやすい例としては、体外・物理的刺激は電マやオナホールなど、体外・精神的刺激としてはAV(アダルトビデオ)やシチュエーションなどです。

問題は体内に関してです。体内・物理的刺激はバイアグラなどのED治療薬が挙げられます。というか「快感」に焦点をあてると体内・物理的刺激にあてはまるものは男女含めてED治療薬しかないのが現状です。

体内・精神的刺激が今回の主題です。ここにあてはまるのがいわゆるキメセクです。 キメセクとは薬物をキメる=飲んでするセックスのことを指します。(そのため、広義にはバイアグラも含まれます) 海外ではchem-sex(chemical-sex)とも言われ、非常に問題視されています。というのも、キメセクで使われる薬物はその多くが違法薬物だからです。日本でも芸能人がキメセク(違法薬物を伴うセックス)で逮捕されており、たびたび問題になっています。

今回、考えていきたいのは**「キメセクは果たして本当に気持ちいいのか」**です。 先に誤解がないようにお伝えしておきますが、決して違法薬物は推奨しません。違法薬物は善か悪か、という理由ではありません。違法薬物は危険だからです。 得られる快感よりも副作用などデメリットが大きすぎます。 ただ、医学的にキメセクの効果についての評価は正当にすべきだと思うので、今回この記事を書いています。しかし、違法薬物のリスクはそれを上回って大きいというのは心得ておいてください。

そして快感を追求する方にはアルコールという選択肢がある、ということも付け加えておきます。 アルコールも依存症を引き起こし、肝不全など身体的にもデメリットは多くあることも付け加えておきますが、他の違法薬物よりはリスクが低いです。

キメセクはどれほど気持ちいいのか

キメセクで気になるのは**「何」をキメると、「どれぐらい」快感が得られるのか**、です。 2019年に実際に様々な薬物の使用経験者約2万人を対象としてアンケート調査で実際の効果はどうであったかを確認したものです。

男性のキメセクの効果

女性のキメセクの効果

これは縦軸を”increased enjoyment or capacity for sex or physical activity”、簡単に言えば「性的な満足度がどれぐらい上昇したか」を10点満点で評価したものです。 つまり、**点数が高いほど「性的満足が高い=効果がある」**ということです。

様々な薬について調査されていますが、代表的なものをピックアップしています。異性愛者でもっとも効果があったものは**MDMA(=エクスタシー)**です。Cannabisとは大麻のことです。

そして、この調査では性行為の相手によって分けてみています。Aが男性で、左から順に「男性全体」「男性愛者の男性(ゲイ)」「女性愛者の男性」「両性愛者の男性(バイ)」となっています。Bが女性で同様です。

大事なのはこの結果をどうみるかです。 確かにMDMAがもっとも性的満足度を上げるといえます。MDMAは一般的にはその名もエクスタシー(ecstasy = 性的絶頂)という名前で流通しており、その名の通りと言えます。

MDMA(エクスタシー)は危険なのか

ここで一度MDMAについてみておきましょう。 答えとしては「エクスタシー自体は危険性は低い可能性がありますが、エクスタシーの使用は危険」です。

どういうことかというと、エクスタシー=MDMAという成分自体は思考力に影響を与えないと主張する研究者もいます。また、副作用としても筋痛や嘔気などはありますが、重篤なものはないという主張もあります。

「違法」薬物は研究が難しいので、エクスタシーの有効性や安全性が今後実証されるのは現実的には難しいですが、このようにエクスタシー自体は危険性が低い可能性があります。

しかし、これは純度100%のエクスタシー=MDMAという物質の話です。 違法に薬物を入手しようとした場合には偽造薬や混ぜ物の問題がつきものです。 巷で出回っているエクスタシーも他のLSDやアンフェタミン、ケタミンなど様々な薬物がほぼ100%混ぜられているため、非常に危険性が高いです。 そのため、理論上エクスタシー自体は危険性は低い「可能性」がありますが、使用は非常に危険という結論になります。 (ED治療薬であるバイアグラも偽造薬が流通しているという点では似ています)

合法的なキメセク:アルコール

この研究で注目すべきポイントは、MDMAではなくアルコールです。 おおよそMDMAは6点、大麻は5点、アルコールは4点です。

違法なリスクを犯してまでMDMAや大麻を求めても、アルコールと大きな差がないのでアルコールで「キメセク」をするのが妥当と言えます。

少し話はずれますが、日本でも大麻を解禁すべきだという主張をされる方もいます。その際の言い分の一つとして「アルコールの方が危険だ。そのアルコールが許容されている。だから大麻も許容されるべきだ」というものがあります。 しかし、これは根本が逆で「アルコールを禁止すべきでは?」という考え方をすべきだと思います。(あくまで医学的な視点からであり、社会的には禁酒法で問題が起きたように難しいと思いますが)

アルコールは依存性もありますし、意識を変容させて問題行動も引き起こします。さらに、慢性的な利用によって肝障害をはじめ様々なリスクとなります。飲み会でアルコールを摂取して前後不覚になっている人たちがたくさんいる状態は端から見れば、ドラッグ・パーティーとどれほど違うのでしょうか。

歴史的・社会的な経緯がありますが、作用としてはアルコールは合法的なドラッグと言えます。そのため、キメセク=快感を求める性行為を追求する場合にアルコールは有力な助けになります。

またアルコールは合法であるため、危険な混ぜ物がある心配が不要です。そのうえ、長期的使用や適切な使用量などもわかっています。 アルコールの難点としてはアルコール自体がEDを引き起こす=勃起しにくくなることがあります。 これについてはED治療薬(バイアグラ)などで対応が可能です。 バイアグラとアルコールの併用についてはこちらでご説明しています。

まとめ

  • キメセクをしたければアルコール

快楽を求めること自体は悪いことではありません。そしてここまでみてきたように、確かに違法薬物の方が効果は高いですが、アルコールと比較して飛び抜けて効果があるわけではありません。 そのため、追求する人はアルコールを試してみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
画像引用 Journal Sexual Medicine VOL 16, ISSUE 5, P721-732

老木医師

監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長

医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています