
監修 老木悠人 医師
ゴールドクリニック 院長
医学的根拠に基づいた性に関する情報、性医学の発信に力を入れています
更新日:2021年05月25日
男性は性欲としてパートナーを喜ばせることを求めます。
しかし、女性のオーガズム(イク、絶頂)は男性よりも複雑で分かりにくいです。
一方で女性自身も体感とては分かってもオーガズムのメカニズムについてはあまり分かっていません。
いくつかの疑問に答える形でオーガズムについて詳しくみていきます。
「女性は中イキするのか?」という問題とともにクリトリスのオーガズムと膣によるオーガズムについて考えていきましょう。
中イキとは、挿入でオーガズムに達することを指します。
しかし、しばしば「中イキは存在しない」「女性はクリトリスの方がイキやすい」という話があります。
その理由としては2つ。
詳しくみていきましょう。
まず、中イキ(膣によるオーガズム)とクリトリスによるオーガズムの違いは、実は医学的には非常に議論があります。
なにが問題かというと「中イキは存在するのか」ではなく**「中イキとクリトリスによるオーガズムは違うのか」**ということです。
挿入によってオーガズムが得られることはわかっています。
一方で、挿入によるオーガズムも結局はクリトリスへの刺激で起きているのではないか、ということです。
私個人としては、現在の医学会の議論を踏まえて中イキとクリトリスによるオーガズムは違うと考えています。
では、そもそもなぜ中イキとクリトリスによるオーガズムが同じと考える専門家もいるのか、このことを説明するために中イキのメカニズムについて考えていきましょう。
女性が挿入で快感を得られる場所については、まだ研究の余地があります。
一方で現在分かっている大きな点としては
の2点による快感です。
女性の体でみたように女性のクリトリスは体の表面から見える部分だけでなく、膣を包み込むように4本の足をだしています。
緑色がクリトリスです。
そしてペニスが挿入されるとクリトリスは内側から刺激されます。
ペニスと恥骨結合によって特にクリトリスの陰核球が圧迫されます。
つまり、挿入でもクリトリスによる刺激が快感を与えているのです。
挿入でもクリトリスへの刺激によってオーガズムに至るということは、専門家のほとんどが同意します。
一方で、膣の奥への刺激がオーガズムを引き起こすかはいまだに不確かです。
かつての**「膣は無感覚」という考えが誤りというのは現在は一般的な考え方です。
しかし、感覚はあっても膣の奥への刺激がオーガズムに繋がる**という考え方はいまだに議論が分かれています。
その理由としては、決定的な証拠が見つかっていないことです。
ただし、私は
ということから膣の奥からのオーガズムはある可能性が高いと考えています。
さらに、実際の女性の感覚としても中イキとクリトリスの刺激によるオーガズムは感覚が違うということが多く報告されています。
中イキの特徴としては
ということが報告されています。
また身体的にも
ということが言われています。
一方で、実際に見た目で分かる特徴の違いはありません。
オーガズムの共通の身体的特徴としては
このように、一番多いのは”Strong all-body contractions”、簡単にいうと全身がビクビクする
という人が**約40%**います。
他にはお腹だけがビクビクするという人もいます。
しかし、約10%の人でオーガズムに特有の身体的な反応はないという人もいます。
他に、女性のオーガズムの特徴として肛門の筋肉が収縮するという報告もされています。
このため女性がオーガズムに達したかどうかは全身もしくは腹部や肛門の筋肉の収縮があるかで多くの場合分かります。
ここまで「中イキはあります!」という話をしてきました。
しかし、一方で女性の中にも「中イキはない」と言う人はいます。
その理由はクリトリスと違って中イキを経験していない女性も一定数いるからです。
上のグラフはそれぞれ上からオーストラリアとイギリスの女性について調べたものです。
残念ながら日本でのしっかりしたデータはありませんが、2つのデータをあわせて考えると
挿入でオーガズムを経験したことがない人は約10%
約半数の女性は挿入でオーガズムを得るのは2回に1回以下
挿入のたびに毎回オーガズムを得る女性は約10%
つまり女性が中イキ(挿入でオーガズム)するのは男性と違って、SEXのたびに毎回あるわけではないということです。
中イキが難しいのは、この点です。
男性であれば射精=オーガズムであり、SEXのたびにほぼ毎回あります。
しかし、女性の場合は挿入のたびにオーガズムがあるわけではありませんし、さらに挿入でオーガズムを経験したことがない人も10人に1人います。
そのために、女性でも「中イキは存在しない!」ということがあるのです。
ここまで中イキについてみてきて分かったこととして
男性の性欲のもっとも強い欲求は実はパートナーを喜ばせることです。
ここで、問題点として女性をイカせようと男性がプレッシャーを感じる、女性自身もイカなければならないとプレッシャーを感じることです。
中イキは満足度が高い一方で、中イキは魔法ではありません。
AVやアダルト産業などが中イキを煽りすぎているという問題もあると思います。
先ほどご説明した通り、女性はSEXのたびにオーガズムを経験する方が少ないです。
また、毎回オーガズムを経験しない方が身体的にも正常だと主張する専門家もいます。
実際に女性自身がオーガズムを偽装することは多いという報告もあります。
先ほどのオーガズムの特徴で見た通り、外からみるとオーガズムに達したかどうかは筋肉の収縮でしか見れないため、オーガズムのふりをすることはできます。(肛門の筋肉もコントロールできます)
ここで大切なのは、本当のオーガズムかオーガズムのふりかを見極めることではありません。
オーガズムのふりをする必要がないパートナーとの関係づくりが大切です。
男性は不安になるかもしれませんが、女性はオーガズムがなくともSEXに満足感を得ていることが多いということもわかっています。
あまり中イキにこだわらずにパートナーと楽しく過ごしましょう。
【参考文献・画像引用】
JSM VOLUME 17, ISSUE 4, P749-760
JSM VOLUME 9, ISSUE 4, P956-965
JSM VOLUME 17, ISSUE 6, P1133-1143
JSM VOLUME 17, ISSUE 9, P1590-1602
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監修 老木悠人 医師
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